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経済評論家 舟泊良章
一般株主は「そっちのけ」?

製紙業界最大手の王子製紙が北越製紙に対して仕掛けた敵対的TOB(株式公開買い付け)は、大企業間で繰り広げられる初めてのケースとして注目を集めた。しかし、北越は三菱商事を引受先とした第三者割り当て増資を実施。さらに、業界二位の日本製紙グループ本社が密かに北越株式を買い集め、王子が買い付け可能な株式は67%程度しか残っていない。王子はこのうち少なくとも50%を買い付ける必要があり、「TOB成立のハードルは高くなった」(証券関係者)のが現実だ。

今回のTOBは、株式の高値売り抜けなどが目的ではなく、業界再編が目的。王子は企業価値の向上や合従連衡に関して株主に判断を仰ぎたいとしていた。しかし、その趣旨に反して一般株主が置き去りにされている面がなかっただろうか。

王子が北越との経営統合を目指したのは、最新鋭の新潟工場を手中に収め、北海道から九州まで各地に点在する王子の小規模工場を統廃合したいためだ。国内市場が頭打ちな中で生産合理化は急務。工場立地の補完関係もあって北越との経営統合は効果が大きいのは明らか。王子は買収を通じて最大手の地位を不動にする戦略だった。

これに対して北越は、効率性の高さに定評がある新潟工場を奪われるとの危機感をあらわにして徹底抗戦の構え。「自主独立路線」を訴える一方で、グループに三菱製紙を持つ三菱商事を引受先とする第三者割り当て増資を実施して、資本提携した。三菱商事は24・4%を保有する筆頭株主となり、三菱商事と提携して王子、日本製紙に次ぐ「第三極」の形成を模索している。

「王子」対「北越・三菱商事」の争いが激化した中で、日本製紙は北越株式を密かに買い進めた。その狙いは、王子が業界のガリバーに躍進する事態の回避にある。百七億円を投じて増資後ベースで6・4%に相当する株式を短期間に取得したのは、王子、日本製紙の二強体制が崩れる事態への強い危機感の表れだった。さらに北越株を八・八五まで買い増し、三菱商事の保有分を合わせてれば33・3%になっている。

北越の安定株主を含めれば、重要決定事項に拒否権を発動できるレベルの株式を既に確保した計算で、王子がTOBを成立させるのは既に困難な情勢だ。勝負は事実上、決した感さえあるが、北越や日本製紙は株主に魅力的な経営の将来像を示していると言えるだろうか。

北越が期待する三菱商事との資本・業務提携の効果は未知数。日本製紙は百億円以上の資金を投入したものの、北越と具体的な提携関係を構築できる可能性が高いとは言えず、投資に見合うリターンが期待できるかどうか疑問視する向きさえある。

王子が仕掛けた敵対的TOBの阻止を通じて、北越は独立を守り、日本製紙は当面、二強の一角を維持する公算が強いが、この過程で一般株主の立場がないがしろになっているのは否めない事実だ。




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