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| 「安倍新政権」がいよいよスタートする。九月二十六日召集の臨時国会で首相に指名された後、直ちに組閣に入り、五年余も続いた小泉政権を引き継ぐ「安倍内閣」が発足する。安倍晋三氏は自民党総裁選や自らの政権構想などの中で、憲法改正や教育改革など「戦後体制からの再出発」を掲げるとともに、経済・財政運営の基軸として「成長」重視の路線を強調している。「脱戦後」の当否はともかく、「ポスト小泉」内閣として「改革」政策の継承と新たな「成長重視」路線をどう重ね合わせていくのかが、最大の焦点となる。 小泉内閣は「改革なくして成長なし」と訴え様々な構造改革に手を付けたが、安倍氏のスローガンは「成長なくして財政再建なし」。「成長」路線を前面に押し出したことで、逆に小泉氏が敷いた「改革政策」のスピードが鈍り、その方向が修正される可能性もある。 その関連で、安倍内閣の具体的な政策課題を挙げると、年金などの社会保障改革、財政再建、そして「官のリストラ」の三つが大きな争点と言えるだろう。社会保障改革は、国民が最も期待する政策課題だが、安倍氏は社会保険庁の「抜本改革」は掲げるものの、肝心の制度改革については、厚労省が敷いた路線から一歩も出ようとしない。少子高齢化が猛スピードで進む中、負担と給付の関係だけで現行制度を維持するのは難しく、「成長」頼りで抜本改革を先送りするようなことがあれば、国民の不満は高まるだろう。 財政再建については、今年七月の「骨太方針」で今後五年間の歳出・歳入プログラムが決まったが、五年後に目標を達成できるかどうか。安倍氏は懸案の消費税「増税」論議を来年の参院選以降に先送りして、歳出削減を優先させるというが、こちらも国交省が公共事業の予算要求を〇六年度予算比18%増とするなど、早くも歳出増加圧力が高まっている。また、安倍氏が一方で掲げる「再チャレンジ支援」政策にかこつけて、各省庁が一種の「バラマキ型」予算を軒並み要求していることも、大いに気掛かり。これまでの「緊縮型」予算という基本を踏み外して、歳出削減のメスが緩んでいく可能性もある。 「官のリストラ」についても、小泉政権の民営化政策で確かに「非公務員」は増えたが、その実態から言えば大きく変わった印象はない。公務員の人数や人件費をいくら減らしても、公的機関の非効率は変わらず、関係業界との癒着や談合、天下りを徹底的に排除する構造改革を改めて断行することが求められている。 安倍氏の言う「成長重視」路線は、高めの経済成長によって税収増加と雇用・所得の改善を促し、財政再建と改革路線を同時に実現しようという目論見なのだろう。しかし、安倍氏が掲げる「年率3%成長」は、今後五年間を展望するとかなりハードルが高い。足元の景気も、四〜六月期GDP伸び率が年率1%だったように、米国経済の減速の影響で屈折点を迎えようとしている。 そして、何よりも「成長」を掲げれば、その余禄で財政が好転する可能性はあるとしても、一方で成長のかさ上げのために様々な景気刺激策が必要となる。厳しい歳出削減をいくら唱えても、いったん薄れ始めた「危機感」は元に戻らなくなる可能性がある。安倍氏は戦後生まれの五十二歳。「成長」政策にかこつけて歳出削減の手を緩めさせようと考える「守旧派」との政策的妥協もあり得ないことではない。「成長」はまさに両刃の剣である。 強烈な個性と政治力で変革期を乗り切った小泉氏に比べ、安倍氏は清新な若さは目立つものの、政治的な統率力や政策面での不安は隠しきれない。参院選さえ乗り切れば、後は消費税の二ケタ「増税」で何とでもなるというのでは、あまりに無策ではないか。 |
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