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経済評論家 小倉 豊
米フォードが株式市場から撤退観測
「物言う株主」至上主義の退潮か
販売不振に陥っている米フォード・モーターが株式の上場市場から撤退するのではとの観測が、 一部に流れている。 株主による経営チェックは資本主義の基本中の基本。 しかし、 企業の経営戦略上、 「物言う株主」 が邪魔になることもある。 不快な雑音を排除するために、 経営者が何らかの方法で資金を調達し、 公開株式を買い取って市場から撤退するMBO (経営陣による買収) が静かな広がりを見せているのも、 企業社会のひとつの断面だ。

最近目立った 「物言う株主」 の挫折は、 ゼネラル・モーターズ (GM) の大株主であるカーク・カーコリアン氏だろう。 同氏は、 GMのリストラを加速させる手段として、 豪腕で知られるカルロス・ゴーン氏率いるルノー・日産連合との資本提携を強く促した。 しかし、 自主再建の信念に燃えるGM経営陣は、 カーコリアン氏の提案を事実上拒否。 日米欧をまたぐ自動車大連合の構想は実現に至らなかった。

日本で注目を集めたのは、 ファミリーレストランを全国展開するすかいらーくのMBOだ。 少子化が進む中で、 ファミレス業の成長は頭打ちかジリ貧と、 同社は先行きを厳しく判断した。 必要なのは、 高齢者への食事の宅配などもにらんで、 店舗や店舗網を大幅に刷新することだろうが、 株式を公開している以上、 毎期の収益や配当について注文が付く。 時間をかけた大胆な企業改革のために選んだのが、 株式公開を取り止めて市場から撤退する道だった。 野村証券系のファンドから融資と助言を受け、 経営陣が株式公開買い付けに成功した。

株式市場からの撤退を選ぶのは、 敵対的買収からの決定的な防衛策になるという背景もある。 近年、 ライブドア、 楽天などによる膨張的でマネー・ゲーム色もあるM&A (企業の合併・買収) が世間をにぎわした。 さらにショッキングだったのは、 王子製紙による北越製紙への株式買収攻勢、 紳士服業界ではAOKIによるフタタへの敵対的買収宣言。 いずれも失敗に終わったが、 老舗企業ですら、 生き残りをかけたシェア拡大のために同業他社の株を公開買い付けする、 優勝劣敗時代の到来を印象付けた。

通常、 市場経済の申し子のように振舞うことが多いのが投資ファンド。 企業買収騒動では、 買収をしかける側に資金供給するのが当然と思われがちだ。 ただ、 最近では、 もっぱら買収防衛側につくファンドも見られるようになった。 それが商売になるからだ。

アパレル大手のワールドがMBOを実施し、 株式を非公開化した際には、 ファンドが議決権のない優先株や劣後債を引き受けて裏から支えた。 このファンドの売り物は、 議決権のない証券を引き受けて経営陣に資金供給するため、 経営陣が確実に議決権の過半数を保持できる点。 投資ファンドから資金供給を受けてMBOに踏み切った場合、 形式的にせよ、 ファンドに経営権が移ることを嫌う経営者も多いだろう。

MBOが今後増えそうなのは、 創業家が高齢化して経営から手を引いているようなケースで、 株の分散や、 思わぬ買占めが起こりかねないという背景があるからだ。 すかいらーくの場合、 創業家に経営権を集中し、 維持する狙いもあった。 弁当のオリジン東秀が、 ドンキホーテに身売りするかどうかで混乱したのは、 創業家が経営陣に無断で総株数の二割強をドンキに売り渡したことが発端だった。 「青汁」 で知られるキューサイも、 東証二部上場株を創業家からMBOで買い取り、 非公開化することを決めている。 MBOと市場撤退は静かなブームとさえ言えそうだ。




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