|
|
| |
|
|
|
| 二〇〇六年三月期に軒並み過去最高益を更新した新日本製鉄など高炉大手各社は、九月中間期でも高い利益水準を維持し、「我が世の春」を謳歌している。しかし、中国が大規模増産を進めているほか、韓国・現代グループが高炉建設に着手。今後数年の間にアジア地域で鉄鋼が供給過剰になる可能性は否定できず、各社が値引き競争の悪循環に陥らないとも限らない。値引きの先には、急速な業績悪化と株価下落が待ち受けているのは明らか。 日本の鉄鋼業界は、外資による株式公開買い付け(TOB)などを通じた買収のターゲットになりかねない危うさをはらんでいるのは見逃せない一面だ。 ◆中国が輸出大国に 世紀をまたいで鉄鋼不況の嵐が吹き荒れ、大手各社が大規模なリストラに踏み切った事態は記憶に新しい。川崎製鉄とNKKが統合してJFEホールディングスが誕生したのも、この時だった。 その後、中国の経済発展を受けて国際的に鉄鋼価格が上昇。世界の粗鋼生産は長く年七億d台で推移していたが、現在は十一億dに達している。急速に生産を伸ばしているのが中国で〇五年の生産量は三億四千九百万d(前年比24.6%増)。昨年末時点の生産能力は四億七千万dで今年の生産量は四億四千万dに達すると見込まれている。 さらに、建設中の高炉の生産能力が七千万d、計画段階の高炉の生産能力が八千万dある。 中国には八百七十一社に上る製鉄会社が存在しており、同国政府は非効率な小規模製鉄所を淘汰する政策を打ち出しているが、地方経済に与える影響や雇用への懸念もあって、閉鎖などが進まないのが実態で、近く年六億二千万dの粗鋼生産能力を持つと言われている。 それでも昨年は五百万dの鉄鋼輸入国だったが、今年はネットで二千五百万d程度の輸出超過になる見通しだ。輸出の大半は欧米や東南アジア向けだが、建材の材料となる線材に関しては〇五年から日本への流入が急拡大している、 中国で生産される鉄鋼のうち輸出されるのは現在、9.57%。同国政府はこの比率を10%程度に維持する方針とされるが、生産力が巨大なだけに、世界市場に与えるインパクトは計り知れない。 ◆再編の芽 このほか、韓国・現代グループは年産七百万dの高炉建設に着手。経済発展が続くインドでは鉄鉱石などが豊富なオリッサ州で同国のタタ・グループや韓国の最大手ポスコが高炉の建設を計画している。インドの〇五年の粗鋼生産量は三千八百万dだが、一〇年には一億dに達すると予想されている。 アジア地域で大規模な供給能力の過剰が起きるのは必至の情勢だ。 日本の高炉大手は、過剰生産に加えて日産自動車が調達先の絞り込みを打ち出したこともあって、二〇〇〇年前後に原価割れでの納入さえ行ったケースがある。たった五年前の話だ。この際の世界的な鉄鋼不況を受けて株価が低迷した企業の買収・統合を進めたのが、世界一位のミッタル・スチール(オランダ)だ。今年に入って二位のアルセロール(ルクセンブルク)を買収し、その生産能力は新日鉄の三倍以上、一億一千万dに達する。 日本の大手鉄鋼会社が、中国や韓国、インドなどの増産に伴う値崩れに巻き込まれ、さらには世界的な再編の荒波に洗われないとも限らない。「我が世の春」を謳歌している今こそ、「嵐」への備えが不可欠だ。 |
|