header
経済評論家 小倉 豊
「負けるが勝ち」だった即席めん戦争

経営者に改革を求めるアクティビスト(行動家)ファンドとして名高いスティール・パートナーズ・ジャパン・ストラテジック・ファンドが、チャルメラなど即席めんの老舗の明星食品に敵対的TOB(株式公開買い付け)をしかけて話題を呼んだ。これにあわてた明星側は、業界トップの日清食品に救済を求め、日清の友好的な対抗TOBでスティールを撃退するのに成功している。だが、真の勝者はスティールだ、というのが市場関係者の大方の見方だ。

スティールが明星株の大量取得を始めたのは二〇〇三年。この時の株価は二百円台だった。さらに今秋、TOBにまで踏み込んだのは、買収防衛策を導入していない弱点を突いたもの。TOB価格は七百円を提示したが、対抗する日清が八百七十円を提示したため、スティール側のTOBに応じた株主はゼロという、一見して完敗に見える結果となった。

しかし、スティールは、日清に対してTOB価格の引き上げや、期間延長などの再反撃策を一切取らなかった。そればかりか、後に日清のTOBを支持することを表明した。スティールの真意は、数字をにらめばすぐに読める。明星株の二割を買い占めたスティールの取得価格は総額約五十億円とされるが、これを八百七十円ですべて日清に売却すれば、三十六億円の巨利を得ることができる。

日清は明星を傘下に入れることで、果てしない激戦が続くカップめんの分野で大きなシェアをしめることができる。ただ、規模拡大がメリットだとしても、ファンドの攻勢に対する受身の再編だったことは明白で、戦略が策定されているわけではない。

スティールの主な投資先企業はアデランス、サッポロホールディングス、江崎グリコ、ノーリツ、シチズン時計など幅広いが、買収防衛策を導入していない企業が半数を超える。ファンドの次の動きに戦々恐々としている経営者は多いに違いない。




BACKHOME