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経済評論家 舟泊良章
中国が鉄鉱石調達でも影響力

中国が世界経済のけん引役に躍り出て久しい。製鉄産業の躍進もめざましく、粗鋼生産は既に全世界の約三割を占めている。その中国の鉄鋼最大手、上海宝鋼集団が二〇〇七年度の鉄鉱石購入価格に関して日米欧の大手に先がけてブラジル・リオドセ社と合意した。世界の製鉄・鉱山の各社がこの価格に追随するのは確実で、宝鋼は〇八年度以降も主導的や役割を演じる可能性が大きい。生産量の拡大を背景に、原料調達で中国の支配力強化が鮮明になっている。

◆五年で三倍
鉄鋼生産は国力の代表的な指標で、かつて「鉄は国家なり」と言われた。八〇年代から九〇年代にかけて日本の粗鋼生産はほぼ一貫して世界一。新日本製鉄は世界最大の鉄鋼メーカーだった。日本の鋼板輸出が米国でやり玉に上がり、米際貿易委員会(ITC)は日本などの表面処理鋼板に一九九三年から反ダンピング(不当廉売)課税をかけていたほどだ。

しかし、鉄鋼生産の中心は完全に中国にシフトした。ここ五年で中国の粗鋼生産量は三倍になり、〇六年は四億四〇〇〇万dに達する見込み。二〇〇〇年前後の鉄鋼不況期に新日本製鉄などが高炉閉鎖を進めたこともあって、現在の日本の粗鋼生産量は中国の四分の一程度しかない。

ただ、中国の生産拡大は自国消費の急増を受けた動きで昨年までは鉄鋼の純輸入国だった。このため鉄鋼需給が世界的にタイトになって鋼材価格が高騰、新日鉄を筆頭に最高益を記録するなど日米欧の鉄鋼会社は息の長い好景気を謳歌している。

◆国際ルール
中国頼みで好景気が続いている格好だが、裏を返せば中国の動向に大きく左右されるのは免れない。同国政府は小規模・非効率な製鉄所の閉鎖を打ち出しているが、実現していないのが実状だ。今年になって中国は鉄鋼の純輸出国になり、〇七年は世界最大の輸出国になるのが確実視されているだけに、世界の製鉄大手は中国の鉄鋼政策の行方を固唾をのんで見守っている。

生産規模で最大になった中国は今年、鉄鉱石の購入をめぐっても主要な役割を演じた。

鉄鉱石はブラジルのリオドセ社、オーストラリアのBHPビリトンとリオ・ティントの三社による寡占状態になっている。世界の高炉各社は毎年、この三社とそれぞれ個別に交渉しているが、最初に合意に達した価格をその他の鉱山・高炉各社が一種の統一新価格として採用する仕組みが定着していた。

〇六年度の鉄鉱石価格をめぐっては、ドイツ最大手のティッセン・クルップが19%の値上げで合意。各社が追随したが、中国全体の膨大な需要を事実上代表して交渉している宝鋼は従来の価格決定ルールに従わず、値下げを要求した。最終的にティッセンの合意価格を飲んだが、価格決定で主導権を握りたいとの意志は明らかだった。

◆宝鋼がリード役に
中国の動きを警戒した新日鉄は〇七年度の価格交渉が始まるのを控えた一一月、韓国の最大手ポスコと価格交渉を共同で行うと発表。中国をけん制したが、提携を見透かす形形で宝鋼はリオドセとの間で早々と9・5五%の価格引き上げを決着させた。新日鉄、JFEスチールとも年末にリオドセと同じ幅での値上げで合意して、宝鋼に追随するしかなかった。

宝鋼は来年以降も鉄鉱石の価格形成をリードする可能性が高い。

ただ中国は鉄鉱石の生産国でもある。将来的に鉱山開発が進んだ後も現在のレベルで鉄鉱石の購入を続けるのかどうか。粗鋼生産や老朽製鉄所の閉鎖に加え、鉄鉱石など原料供給面でも中国の動向が世界の鉄鋼業を大きく左右するのは間違いない。




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