header
経済評論家 小倉 豊
露出する外資系投資ファンド

一九九七年秋に、山一証券が簿外債務の発覚で自主廃業に追い込まれて約十年が過ぎた。同社は実質的に、米メリルリンチに買収されたが、今度は、不正会計問題で上場廃止の危機に追い込まれた日興コーディアルグループが、米シティの子会社になることが、両社で合意された。

これでかつての四大証券のうち二社が外資の軍門に下ったことになる。

ただ、シティ・日興の大再編の成否を握るのは、海外投資ファンドであることがわかってきた。まさに、国境を越えた資本の増殖運動に、日本の企業社会が巻き込まれ始めたことを象徴する一件だ。

もともと、日興はシティと法人営業部門では全面提携しており、その一環として日興コーディアルに4・9%出資している。大株主ではあるのだが、筆頭ではない。それは、日興の不正会計が表面化し、同社が上場廃止の厳罰を下される可能性が出てから、日興株の取得に動いた海外ファンドがあるからだ。

いまのところ判明しているのは、ハリス・アソシエイツ7・23%、オービス・インベストメント・マネジメント6・75%、サウスイースト・アセット・マネジメント6・08%、マッケンジー・グループ5・74%で、計25・80%にまで高まっている。これらのファンドは、企業の合併・再編などで株価上昇を期待できる重要な出来事を見込んで、株式を買い進める「イベント期待」型投資で名を馳せている。今回の日興株買い増しは、まさに典型的な事例と言える。

シティは日興への出資比率を50%超に引き上げることを最低条件にTOB(株式公開買い付け)に踏み切る方針を表明した。本音は、全株取得が狙い。そのために、買取価格は千三百五十円と、市場実勢を上回る水準を提示してはいる。

だが、ファンド側は既存株主を代表して、買取価格のつり上げをシティに要求する可能性がすて切れない。大阪製鉄による東京鋼鉄の子会社化を、東京鋼鉄の株主がファンドを中心に団結し、自分たちに有利な条件を求めて株主総会で経営陣による子会社化案を否決したばかりだ。市場では早くも、シティが買取価格を吊り上げるとの思惑から、千三百五十円を超える水準で日興株を買う動きがある。

TOBの成否は、個人や機関投資家がファンド側につくか、シティ・日興の経営陣につくかに大きく左右されそうだ。



BACKHOME