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経済評論家 小倉 豊
景気認識はわずかに弱め
虫眼鏡で見る日銀「展望レポート」
四月末に日銀が公表した景気と物価の「展望レポート」は、わずかに弱めに軌道修正する内容だったといえる。二〇〇八年度の消費者物価(CPI=生鮮食品を除く)は、九人の審議委員が示した予想の中央値が前年度比0・5%上昇、実質GDP(国内総生産)の中央値が2・1%と控えめだ。これは微妙な数値。日銀は半年前の〇六年十月の展望レポートで、〇七年度のCPIを同じ0・5%と置いて二月に利上げに踏み切ったのだから、〇八年度前半に追加利上げしても矛盾はない。だが、レポートの文言を虫眼鏡で見れば、逆に、弱気の表現も散らばっている。

景気の先行きのリスクを指摘した中で目を引くのは、米国経済の見方が慎重になったことだろう。全体としては米国経済は「安定へ軟着陸する可能性が高い」と、前回とほとんど変わらないように感じられる。しかし、具体的分析の部分になると「住宅市場の調整が予想以上に深いものとなったり、設備投資が下振れた場合、景気は一段と減速する可能性がある」と、踏み込んだ弱気シナリオを書き込んでいる。

また、今や産業を主導するIT(情報技術)に関して「IT関連財の需給動向」にも注意が必要とした。半導体サイクルと言われるように、IT部品の在庫の増減は景気の最も重要な先行指標だが、過剰在庫に突っ込んでいく可能性があるということだ。

一方、国内要因については、日銀が賃金動向に神経質になっていることがわかる。「景気拡大が続く中にあっても、賃金上昇のテンポが生産との対比で高まっていかないような場合は、物価への下押し圧力が根強く残る」というのが今回披露した認識。マスコミなどでは既に大々的に問題視されてきたことだが、景気が拡大しているといっても賃金が上がらないので実感がない。だから、お金を使うのを控えがちになるし、そうすると物価も上がりにくい、という当たり前のことだ。しかし日銀は、昨年秋には「労働市場の需給が着実に引き締まっていることを踏まえると、いずれは(物価)上昇が明確になる可能性が高い」として、物価は上がるし個人消費も活気付くとしていた。やっと考え直したか、というのが普通の感覚ではないか。

読んでいて、困ったな、と感じさせるのが、金余りによる投機のリスクにどう対処するのかという点だ。レポートは「金融環境などに関する楽観的な想定」で、金融・経済活動が過熱する傾向に警告を発した。いつまでも超低金利が続くわけではないぞ、ということだ。これは、超低金利の円を借りて、金利の高い通貨を買って投資し、その利ざやを稼ぐ「円キャリー取引」を念頭に置いているのは確実。「金融資本市場において行き過ぎたポジションが構築されたり」という言及が、それを示している。

だが、日銀は市場との緊密な対話を掲げており、市場に制裁を加えるための利上げ(金融政策)を宣言したことはこれまでない。米国のリスクも高まり、賃金の伸び悩みで消費や物価もさえない時、市場の投機を抑えるために利上げすることもありうるだろうか。興味をそそるテーマである。



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