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経済評論家 舟泊良章
CO2増加に拍車の懸念
京都議定書の矛盾と限界
ドイツのハイリゲンダムで開かれた主要国首脳会議(サミット)は、二〇五〇年までに温暖化ガス排出量の50%削減を検討することで合意した。京都議定書が先進国に求めている排出削減を大幅に上回る野心的な合意だが、実現に向けた道筋はまったく見えていない。それだけでなく、既に発効している京都議定書の実効性や効果を疑問視する向きは多い。将来に向けた大目標を議論する前に、京都議定書の枠組みを改めて検証しておくことは不可欠だ。

◆七割は削減の対象外

京都議定書は二〇〇八年から二〇一二年が対象期間。先進国全体で二酸化炭素(CO2)など温暖化ガスの排出量を一九九〇年比で5%削減するとしている。しかし、世界全体の22%を排出している米国が土壇場で離脱。また、18%を排出している中国、急速に経済発展しているインドなど途上国は削減義務がなく、日本や欧州など批准国の排出量をすべて合わせても全体の三割程度しかない。

日本は6%削減が義務付けられている。しかし、達成しても地球レベルではCO2が0・3%しか減らない計算になる。また、欧州各国が削減に力を入れても、中国やインドの経済発展に伴ってCO2排出量が大幅に増加するのは必至。京都議定書によって地球温暖化が止まることはあり得ないのが実態だ。

その上、国家単位で義務付けた排出削減の矛盾も露呈し始めている。典型的なケースは、日本の鉄鋼業界をめぐる状況だ。

京都議定書の議論が大詰めを迎えていた一九九六年、日本鉄鋼連盟は製鉄過程でCO2が大量に排出される実態を踏まえて、加盟各社のCO2排出量を二〇一〇年までに一九九〇年比で10%削減するとの自主目標を決め、公表した。石油危機が発生した一九七〇年代から省エネや生産効率化に取り組んで来た実績もあって、一段のCO2削減の見通しが立っていたためだ。

◆政治的な合意

この自主目標は日本の粗鋼生産量が年一億dレベルのまま横這いで推移するのが前提だった。しかし、世界的な鉄鋼需要の増大を受けて、二〇〇五年度の粗鋼生産は一億一千四百万dに増加。日本の鉄鋼各社は世界一のエネルギー効率を誇り、欧米の主要メーカーに比べても生産単位当たりのCO2排出量が一割以上少ないが、生産が増加すれば、その分、温暖化ガスが増えるのは自明の理だ。一段の省エネに取り組んだものの、二〇〇五年度はCO2排出量を一九九〇年比で6・5%減らすのが限界だった。

こうした状況下でCO2排出を抑制するために生産拡大を見送ればどうなるか。収益機会を失うだけでなく、エネルギー効率が悪い中国の製鉄会社などが増産する可能性が高い。その結果、温暖化ガスの排出量が世界全体で見れば増えてしまい、地球温暖化に拍車をかけかねない。

京都議定書は科学的な議論に基づいた合意というより、いわゆる政治的な「合意のための合意」だった側面は否定できない。

二〇一三年以降の温暖化防止策となる「ポスト京都議定書」はサミットでの合意を受けて、これから議論が本格化する。米国はもとより中国やインド、さらには大多数の途上国まで含めた国際的な枠組みとするのは大前提だが、それだけでなく、日本が得意とする省エネ技術を生かした世界レベルでのエネルギー利用効率の向上を通じたCO2排出量の削減という視点が不可欠だ。

少なくとも、効率的な設備を持つ日本が生産を制限されるような仕組みだけは排除する必要がある。



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