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経済評論家 舟泊良章
規制緩和が経済成長を阻害も
労働分配の視点が不可欠
労働規制の緩和を受けて急成長した人材派遣大手フルキャストが港湾関連業務に違法な派遣を行っていたとして、厚生労働省は全事業所に1―2カ月の業務停止命令を出した。この処分と軌を一にして同省は、派遣労働の増加と表裏の関係にある格差拡大を踏まえ、労働経済白書で「労働者への分配強化」の必要性に言及している。また内閣府の経済財政白書は、賃金が伸びない要因の分析を試み、派遣など非正規雇用の拡大を理由の一つに上げた。

賃金の伸び悩みは消費拡大を妨げ、今後の景気の足を引っ張りかねない。規制緩和が行き過ぎではなかったのか一度立ち止まって、多角的に議論する必要がある。

◆「手配師」「口入れ屋」

労働者派遣はかつて、「手配師」や「口入れ屋」の生業(なりわい)で全面的に禁止されていた。やくざの資金源になっていた時代もあったほどで、犯罪行為だった。

転機となったのは1986年の労働者派遣法の施行だ。働き方の多様化といった視点から導入され、当初は秘書や通訳など専門的な知識や技術が必要な13業種に派遣対象が限定されていたが、96年に研究開発職などを追加して26業種まで拡大。99年には港湾運送業務、建設業、警備などを除き原則自由化され、これ以降、派遣労働が急拡大した。2004年に製造現場への派遣が解禁されると、大手企業の主力工場でも派遣労働者が勤務するのが常態化している。

労働規制の緩和を受けて多くの企業が正社員を減らして賃金が低い非正規雇用を増やしたのは当然の帰結だろう。こうした中、必要に応じて生産を増減するのに役立つ日雇い派遣の分野でフルキャストは業績を伸ばした。時代の寵児といえるほど脚光を浴びたが、その裏では、港湾業務への違法派遣が常態化していたという。港湾業務の日雇い派遣はかつて、やくざがらみの「手配師」が得意としていた分野ではなかったのか。

◆伸び悩む賃金

派遣労働が85年まで禁止されていた理由を今一度、思い起こしておこう。簡単に言えば、弱い立場の求職者が「ピンハネ」されるのを防ぐのが狙いで、だからこそ公的機関にしか斡旋業務が認められなかった。

この規制の起源は、産業革命が英国で始まった時代に遡る。16時間以上の長時間労働や低賃金、児童労働が横行して労働問題が深刻化すると、労働者保護を目的とした労働法が整備され、社会保障・福祉制度が整えられていった。その一つが日本では派遣労働の禁止だった。

そんな時代の英国の労働者ほどではないにしても、日雇い派遣での生活を余儀なくされている層や、規制緩和の荒波に洗われたタクシー業界の運転手らの中には、睡眠時間を削るほどの長時間労働をしても生活保護水準を下回るレベルの給与しか得られないケースが出ている。

その一方で、いわゆるヒルズ族に代表される起業家だけでなく、業績好調な大手企業の経営層は報酬が大幅にアップしている。

較差が拡大しているだけでない。国全体でみた1人当たり賃金が伸び悩み、今後の景気を左右しかねない。経済財政白書は「(収益が拡大している)企業部門から家計部門への波及がゆるやかになってきている」「06年後半から家計部門に弱さがみられる」と懸念を示した。

国際競争の激化を踏まえた規制緩和は時代の流れだろう。それでも、生活保護レベルの給与させ得られない雇用状態は不合理としか言えない。さらには、賃金を犠牲にした形で進む現在の景気拡大は、いびつではないか。こうした不合理やいびつな経済を生み出した要因の一つに違いない労働規制の緩和に関して、再検討する時期に来ているのは間違いない。




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