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経済評論家 舟泊良章
温暖化対策の難しさ浮き彫り
APECが妥協の末に努力目標
アジア太平洋経済協力会議(APEC)はオーストラリアで開催した首脳会議で、地球温暖化対策に関する特別声明「シドニー宣言」を採択し、エネルギー利用効率の向上に関する数値目標を打ち出した。京都議定書に続く2013年以降の温室効果ガス削減に向けた枠組み作りの素地と期待されるが、この数値目標をめぐって途上国が反発し、議長国オーストラリアと激しく対立。最終的に数値目標を拘束力のない努力目標とすることで妥協が図られたが、この議論の過程は温暖化対策の難しさを改めて浮き彫りにした。

京都議定書は12年までが対象期間で先進国の二酸化炭素(CO2)排出量を削減する計画だが、世界全体の排出量の22%を占める米国が土壇場で離脱。中国など途上国は削減義務がなく、日本や欧州など議定書批准国の排出量をすべて合わせても全体の3割程度しかカバーできていない。これから議論が本格化する「ポスト京都」では米中を含めた枠組みが不可欠。こうした認識を背景に、インド、欧州などを除いた主なCO2排出国が参加するAPECにおける温暖化対策の議論に注目が集まっていた。

今回のAPEC首脳会議を主催した豪州は、米国とともに京都議定書を離脱しているが、昨年来の大干ばつで主要産業の農業が大打撃を受け、地球温暖化に対する懸念が急速に高まっている。こうした国内事情もあって豪州は、シドニー宣言の原案として「APEC域内のエネルギー利用効率を30年までに05年比25%以上改善する」と打ち出した。温室効果ガスの総量削減を主張する欧州連合(EU)と異なり、利用効率を上げれば経済拡大の足かせにならない仕組みだ。

米国は、EU方式の目標設定に反対だが、環境対策に消極的というレッテルを払拭したいのも本音。ポスト京都の枠組み作りで主導権を発揮したい思惑もあって豪州案を支持。エネルギー効率が世界トップレベルの日本は、国内総生産(GDP)当たりの利用効率で共通目標を設定するなどできれば産業の競争力を維持・強化できるとの読みもあって豪州を支援した。

これに対して東南アジア諸国を中心とした途上国は「温暖化の責任は先進国にある」との認識が元々強い。さらに、事前の根回しが不十分なままで数値目標が打ち出されたことに反発。経済発展の妨げとなる事態への懸念もあって目標設定に強く反対した。

最終的に拘束力がない努力目標とすることで妥協が図られたのだが、地球レベルの温暖化対策を国家・政府レベルで議論すれば利害が激突し、合意を得るのは至難の業だという事実が改めて際立った。これは、京都議定書の協議で実証済みだが、ポスト京都の枠組みをめぐっては中国やインドなど途上国を含めた温暖化ガスの抑制策が話し合われる。利害の溝を埋める作業が一段と困難になり、一筋縄でいかないのは確かだが、議論が続く間も地球が年を追って温まっていくのもまた間違いない事実だ。




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