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経済評論家 原田淳也
「背水の陣内閣」の仕事

「背水の陣内閣」福田政権がスタートした。衆参「ねじれ国会」の下では、主要な政策課題はすべて与野党協議に委ねざるを得ない。政府与党にとって確かに茨の道だろう。福田首相は第一に「政治の信頼回復」を掲げ、構造改革路線の「手直し」にも言及した。だが、全体として新政権が何を目指すのか、その具体的な姿は見えない。バランスや調整を重んじる政治手法だけで、困難な政策課題に対応できるとは到底思えない。

とりわけ、小泉・安倍内閣で進められてきた構造改革について、福田氏は「経済合理主義の行き過ぎ」と指摘。改革の方向性は変えないものの、弱者への配慮や福祉切り下げの見直し、都市と地方の「格差」への対応を打ち出した。高齢者の医療費負担増の「凍結」などは、その具体策なのだろう。公明党との政権協議で枠をはめられたことも大きい。

しかし、国民負担を抑制すれば、当然、厳しい財政に跳ね返る。負担増凍結に伴う歳出増1千億円の取り扱いは、政府内で早くも問題化している。また、地方へ回る予算や交付税に配慮すれば、それだけ歳出は膨らみ、バラマキ型に陥る可能性もある。「改革の手直し」といくら叫んでも、海外からは「改革の後退」と受け取られるだろう。

日本の場合、外交、経済、財政、社会保障、地方政策などすべての政策課題は、赤字財政という重しの下で絡み合っている。各省庁の縦割り政策という壁もあるが、所詮すべての分野に国費をばらまくことはできない。要は、政策課題に優先順位を付け、政策全体の体系を構築し、中長期的な解決のプランを明示することが、政治の仕事であろう。

そういう視点から見ると、新内閣はいったい何に取り組み、何を実現したいのか、その点が極めて不明瞭だ。例えば、安倍内閣時代の「成長政策」は今やあまり語られなくなった。「成長の成果」を財政再建や分配政策に生かすという発想自体が崩れてきたことも大きいが、成長と格差、弱者のためのセーフテイーネットのあり方をどう見直すか議論された気配はない。労働政策として、政府が格差問題にどう関与していくか、好収益を誇る企業と家計の関係など、見直しが必要な課題はいくらもある。

「政治の安定」は確かに必要だ。しかし、来る総選挙を意識してまず「地方に安心を」では、政治の体をなさない。「政治の信頼回復」が第一というなら、「1円の領収書」も重要だが、政党交付金の返上、議員定員の削減に取り組む気概を示してはどうか。

この秋、テロ特措法の問題はあるが、与野党対決の修羅場はむしろ年末の消費税引き上げをめぐる攻防ではないか。なぜなら、改革路線「修正」に伴う財政赤字の増大を考えれば、歳入面から手立てできるのは「消費税増税」しかない。増税は「改革継続」のアピールにも役立つ。年金基礎部分の税方式化や消費税の福祉目的税化なども含めて、消費税が政治の大きな争点となるのは間違いない。そして、それが解散総選挙の引き金になる可能性も高いと見ておいた方がよいだろう。




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