header
経済評論家 小倉 豊
企業業績でも明暗
重要度増す新興国向け輸出
今年7〜9月の国内総生産(GDP)を詳細にみると、わずかな異変が起きている。需要項目の中で、名目輸出が政府最終支出を抜いて、初めて2位に浮上したのだ。日本経済が、明白に内需主導だったのはバブル期くらいで、輸出依存の景気回復自体はめずらしいことではない。ただ、近年では対米依存が薄れ、しかもアジア以外の新興国への輸出が増え、新市場開拓で先行した企業が業績を伸ばしているのが大きな特徴だ。

7〜9月GDPの政府支出と輸出の差額は、統計上わずか10億円。ただ、これがターニングポイントになる可能性はある。

景気を分析するうえで、輸出先として米国、欧州連合(EU)、アジアが重視されてきた。中国やインドへの注目度が急激に高まっているため、最近では、アジアへの視線が熱い。

だが、「その他地域向け」(中東、東欧、ロシア、中南米、アフリカ、オセアニア)というのもまったく軽んじられる比重ではないのだ。9月のロシア向けは、前年同月比67%もの増加。他に、中東は62%増、東欧47%。しかも、ボリュームも無視できず、日本の輸出総額の伸び率に占める寄与度は10月に34%に達し、上昇し続けている。

さらに見ると、中東向けはプラントなどの比重が高く、ロシア・東欧、中南米は自動車などが目立つ。一方、近隣のアジアに対しては「世界の工場」に対する部品や工作機械といった、最終消費財ではない生産財が大きい。実は、日本から輸出した生産財で最終消費財をつくり、対米輸出している構図は、もう長く続いている。逆に見ると、米国の消費が落ち込むと、日本の対アジア輸出も引きずられやすい。ただ、「その他向け」にはその心配は、比較的小さいのが実情だ。

この構図は、今年の9月中間決算における、企業の業績予想にも予兆が現れている。既に数字に表れたのは、さしあたりアジアへの取り組み。インフラ投資や自動車、資源を輸送する海運の威勢がいい点に注目すべきだろう。

まず、電機大手の中でも「勝ち組」に位置づけられてきたシャープの業績が壁にぶち当たった。米国で住宅市場の冷え込みの影響を受け、「大画面の薄型テレビの売れ行きが伸びない」と苦戦が続き、一転して減益決算となった。ソニー、松下電器産業など電機各社の薄型テレビ事業は採算が悪化し、クリスマス商戦を控えて予断を許さない状況だ。

欧米市場で好調だったマツダも、「サブプライム問題など不安定な外部環境が課題」と先行きには慎重で、通期業績見通しを据え置いた。中間期に2年連続で過去最高益を更新したトヨタ自動車だが、北米での自動車販売台数の伸び率は前年の17%から2%に鈍化し、陰りが見え始めた。

一方、中国やインドなど好景気が続く新興国の需要を積極的に開拓した企業は、相次いで通期業績を上方修正した。新興国でのインフラ整備や資源開発が進む中、コマツは主力の建設・鉱山機械の販売が好調で、今期は4期連続の過去最高益更新を見込む。北米の売り上げは12%減となるものの、「53%増となる中国など北米以外の地域が大きく伸びる」と強気だ。

インドを中心とするアジアでの販売が大きく伸びたスズキは、国内外で総額3900億円の大規模な追加投資を行う方針を発表した。また、新興国向けの資源輸送の急増により、日本郵船など海運大手3社はそろって過去最高益を記録。バラ積み船市況は「過去に例を見ない高騰ぶり」で通期見通しも上方修正した。

少子高齢化社会の到来で、日本が成長を確保するためには、輸出先と輸出商品の確保が是が非でも必要なのかもしれない。だが、世界経済の成長エネルギーは、主要先進国から明らかに多極化しており、国も企業も進路の決定は難しくなっている。



BACKHOME