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経済評論家 小倉 豊
金融混乱の収拾策
米銀は公的救済なしで踏ん張れるか
金融システムは国境をまたいで広がった精緻な信用の網ノ目のようなもので、1カ所のほころびが瞬時に破綻の連鎖につながる。その1カ所のほころびを阻止するコストは半端ではなく、1998年に行き詰った日本長期信用銀行(現新生銀行)、日本債券信用銀行(現あおぞら銀行)には、ランニングコストを除く「やりっ放し」の金だけで8兆円を超える税金が使われた。いま、サブプライム危機の痛手が深い欧米の銀行では、ついに英国中堅銀行のノーザン・ロックの破綻阻止に総額550億ポンド(約11兆円)以上の税金が投入されることが決まった。さて、サブプライム震源地の米国の銀行は大丈夫なのか。

今回の危機で銀行救済への税金投入はノーザン銀が初めてではなく、既に、IKBドイツ産業銀行に対して、15億ユーロ(約2兆4000億円)の拠出が決まっている。

一方、ポールソン米財務長官は、先の東京G7(先進7カ国財務相・中央銀行総裁会議)で、米銀に関しては、自助努力による資金調達の必要を訴えた上で「外国からの投資は(米国に対する)究極の信任投票だ」と強調した。米政府要人としては、大統領選挙を控えて、納税者から拒否反応が懸念される公的資金(税金)の活用の可能性を、軽々に口にするわけにもいかないようだ。民間での自力再生への自信が本物かはなかなか見極め難い。

確かに海外からの米銀支援は活発に進んでいるようにも見える。最大手のシティグループは、原油高で潤うアラブ首長国連邦(UAE)のアブダビ投資庁から75億j(約8000億円)の出資を受け、さらに、サウジアラビアのアルワリード王子や中国の国家開発銀行から100億j(1兆円超)の出資獲得の方向になっている。モルガン・スタンレー証券は中国投資(CIC)が50億j(5500億円)を調達、ベアー・スターンズ証券も中国の中信銀行と資本提携して信用を保っている。

話は2年前にさかのぼるが、米石油会社ユカルノの買収に乗り出した中国海洋石油(CNOOC)は、米議会から安全保障上問題があると猛反発を受け、撤退した経緯がある。ポールソン長官が、米国の金融システムの中核を担う大手銀行への海外からの出資を、積極的に促す現状との違いが際立つ。

だが、英独の「中堅」銀行に対する11兆円、2兆5000億円という資金投入額に比べて、米銀の資本増強額は少なくはないのか、というのが素朴な印象でもある。

シュタインブリュック独財務相は、サブプライム関連損失は世界で4000億ドル(約43兆円)に上るとG7が試算していることを明らかにした。これまでの推計値である経済協力開発機構(OECD)の3000億j、国際通貨基金(IMF)の2000億jより悲観的な結果。混乱の底はまだ見えていない。

中国にせよ中東産油国にせよ、輸出で稼いだ金の大きな部分は決済通貨であるドル建て資産で保有せざるを得ない。ドル急落ともなると為替損も膨大だ。米銀の経営危機が表面化して米国とドルへの信認が低下するのは避けたいはず。ポールソン長官に本当に自信があるとすれば、根拠はそこだろう。しかし、サブプライム問題に底が見えないなら、銀行の損失にも底が見えないことは自明。かといって、投資側からすればいったん投入した資金の保全、回収に走ればドル危機を招き、自分の首を絞める。

混乱が収まらなければ、ドルを大量保有する海外投資機関としても、どこまで救済的な資金拠出に応じていくか判断は難しいのだ。リスク覚悟の海外や民間の資金が何らかのきっかけで撤収に入ると、金融システムは間違いなくパニックに陥る。引き金が想定内のものとも限らない。そうした最悪の事態を想定した米政府、あるいは米連邦準備制度理事会(FRB)の銀行救済策はおそらく準備されているだろうし、実際に発動される可能性も決して小さくないだろう。



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