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経済評論家 原田淳也
「日本版SWF」の欺瞞

自民党の有志議員たちが「日本版国営ファンド」の創設に向けて議論を始めた。国際金融市場で中東産油国や中国、ロシアなどの政府系ファンド(SWF)が活躍するのに刺激されてか、日本にも国営ファンドをということらしい。外貨準備や年金資金などを原資に積極運用して「国富を増やす」というが、実現可能性も含めて何やら怪しげな構想だ。

自民党内の検討チームによれば、約1兆jに上る外貨準備や年金資金、国有不動産などの政府資産の一部でファンドを組成、世界のトップレベルのファンドマネジャーを募って株式や債券などの金融商品に資金運用するという。

しかし、国民の目から見て、この構想には欠陥だらけの矛盾が多過ぎる。政府自民党は、つい最近まで構造改革を掲げ「官から民へ」と官業の民営化を進めてきたはず。それが今なぜ、時代に逆行するような「官営ファンド」なのか。資金運用は民間のプロに任せるといっても、基本的な運用指図はあくまで国の判断だろう。

現在でも、年金保険料の一部はリスクの低いパッシブ運用を旨に民間に業務委託している。年金給付の原資である基金は国民の財産であって、政府のカネではないという自制が働いているからこそだ。それを資産運用で「稼ぐ」となれば、当然リスクの高い金融商品にも手を出すことになる(中国系ファンドは運用利回り年5%以上)。だが、運用に失敗して資産が目減りしたとき、一体誰が責任を取るのか。そのあたりの説明は全くない。

そもそも、国民の財産である年金基金や外貨準備を市場の厳しい競争にさらしてまで「増やしてほしい」などと、国民は思っていない。それを、あたかも自分たちの「持ちがね」のように「もっと増やせる」と幻想を振りまくのは、下手な詐欺師のやることではないか。

実際、日本の1兆j近い外貨準備も、中東産油国のような「余剰」資産ではない。外貨準備に見合う政府短期証券(FB)を発行して民間から調達したカネであり、突き詰めれば国民の預貯金にすぎない。外貨準備の過大部分はまずFBの償還に充て、それでも余る部分は国庫に返納するのが筋だろう。ちなみに昨年末現在のFB発行残高は102兆円。

財政再建や増税に関連して、最近、霞が関の「埋蔵金」が話題になった。その有無については「無駄遣い」を含め徹底的に精査すべきだが、今回の日本版SWF構想について言えば、埋蔵金の有無を曖昧にしたまま、「国営ファンド」という「官のおもちゃ」を用意したところに狙いがあるのだろう。その構図は、10年間固定の道路特定財源と似ている。喜ぶのは、高額の手数料が落ちるファンドマネジャー業界だけかもしれない。

考えてみれば、SWFを持つ国は産油国や中国、ロシアなど、政治的体制として民主主義的とは呼べない国が多い。そうした国々と「対峙するため」にだけ、色あせた国家主義を持ち出すのは、あまりに時代遅れではないか。それとも、官が運用すれば、サブプライムローンのような「失敗」は絶対にしないとでもいうのだろうか。



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