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| 日本の証券業界大手の野村証券であってはならない事件が起きた。所属社員によるインサイダー取引事件だ。しかも、逮捕された社員はM&Aを取り扱う花形部門の「企業情報部」の社員で、自ら手掛ける事案にかかわる企業の株式を売買して不当な利益を得ていたというから、きわめて悪質だ。 長引く株価の低迷や外国人投資の先細りなどを考えると、この事件をきっかけに日本の証券市場は「信頼できない」とするムードが広がりかねない。公正であるべき市場の信頼を傷つけた罪は大きいというべきだろう。証券・金融各社は、事件の背景となった内部管理体制のあり方を再構築するとともに、ルール違反の野村証券には行政当局による厳正な処罰が求められる。 この1年、企業の内部情報を悪用したインサイダー取引が目立って増えた。最近では、NHK記者による「特ダネ」事前入手による取引が発覚。また、監査法人の元職員が担当企業の監査を通じて不正な取引に手を染めたり、決算書類の広告や印刷を担当する会社の職員が事前情報を得て取引した事例など、目白押しの感がある。 だが、今回の事件は、企業情報の発生源(M&A仲介)そのものから起き、市場取引の公正を担保すべき証券会社が舞台となった点が、従来のケースとは異なる。2次的な情報を得て不正に走るのとは違って、情報発生源による「犯罪」だけに、1社員の単なる不始末というわけにはいかない。株価を動かすであろう立場の人間が悪事を働けば、市場の信頼は根底から揺らぐ。何かが壊れ始めた「信」なき時代の象徴と言えるかもしれない。 市場主義経済には、公正な競争を担保するために様々な規範やルールがある。経済行為における売り手と買い手の「情報」の非対称性への配慮もその一つ。職務上知りえた「情報」をもとに優越的な売買を禁止するインサイダー取引規制があるのはそのためだ。 金融庁は、2006年にインサイダー取引規制の違反者への罰則上限を懲役3年から5年に引き上げたが、この程度で本当にいいのかどうか。情報発生源による違反の場合は米国並みにもっと厳罰化すべきではないのか。いま、金融・証券各社は、自社の内部管理体制の点検、管理強化の方向に動いているが、「最終的には個人のモラルの問題」とする声も多い。企業側が何重もの防止策を用意するのは当然としても、最終的には刑罰強化で「民主主義下の市場モラル」を維持するほかあるまい。 野村の事件に関して、違反者が中国籍の社員であったことを重視する見方が一部にあるが、グローバル化する企業の人事制度の下で、犯罪者の国籍をうんぬんしても意味はない。社内研修などで「市場のあり方」や「公正な競争」の意味を徹底して教育するしかない。 今後、金融庁は野村に対して行政処分を発動する見込みだが、処分に「変な手心」が加わるようなことがあってはならない。内部管理体制の不備を突くだけでなく、業界最大手が市場の信頼をそこねる重大事件を引き起こしたという点を忘れてはならない。 |
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