| 『霞ケ浦報道』(上下巻)を読む 霞ケ浦に関する得難い記録 前田 修 |
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| この3月、常陽新聞社から「霞ケ浦報道」が出版された。これは、上下合計2千nに及ぶ大部の印刷物で、(題字が常陽新聞となった)1951年から1999年まで、過去約50年間に掲載された霞ケ浦関連の記事を纏めたものである。上巻はおもに一般記事、下巻は特集記事を収め、そのまま20世紀後半の霞ケ浦に関する得難い記録となっている。出版事情は必ずしも好ましくない昨今、こうした地味な記録集を作成、出版した常陽新聞に敬意を表する。 記録として特に興味深いのは、ときどきの世相を反映する記事を纏めた上巻である。これは千余の記事を掲載しているが、掲載年別に記事数を調べてみると、図1のようになる。霞ケ浦に関する記事は、1970年まで年間10本前後で推移したが、その後急激に増加し、1999年には67本に達している。この増加には紙面の増強や新聞社主催事業のキャンペーン等も関係していようが、この20年間に、霞ケ浦に対する社会一般の関心が急に高まったことは間違いない。 図1には、いくつかの際立ったピークが見られる。ピークにあたる1973年は塩害と逆水門閉鎖の年、81年は富栄養化防止条例準備の年、90年は水質の変化が顕著になった年、そして95年は世界湖沼会議の年である。このように、いくつかのピークは、それぞれ霞ケ浦のエポックを示しており、この湖の歴史が平坦でなかったことが分かる。 過去50年間の記事を内容にしたがって類別整理し、内容別ランキングを作ったところ、表1のような結果を得た。 霞ケ浦に関する話題とは、おおむね表1に示す内容を含むものであったことになる。ただし、この順番は、社会的関心の度合いを反映するものであり、したがって、ランクが下だからといって重要でないことにはならない。たとえば、地域の基盤確保に最重要と思われる治水関連の記事は、やっと10位にランクされるに過ぎないが、これは、水害防除に対する過去50年間の投資が無駄でなかったことの証拠とも言えよう。 話題の中心は時代とともに移り変わる。記事の内容から時代の移り変わりを見ようと、50年間を10年ごとに区切り、総記事数に占める主な内容のパーセンテージを求めたところ、表2のようになった。 この表から、@60年代までは霞ケ浦の話題といえば漁業問題であったが、いま漁業は相対的に地盤沈下していること、A水質悪化は70年代・80年代に注目されたこと、B水害・治水については70年代以降ほとんど忘れさられたこと、C霞ケ浦総合開発に関する論議が70年代を中心に盛んであったこと、D市民活動や研究活動、集会などが盛んになったのは、80年代からであること。E干拓の問題では高浜入り干拓中止でほぼピリオドが打たれたこと、F景観関連の話題は一次下火であったが、近年は増加していること(50年代、60年代は国定公園指定が中心であるのに対して、90年代は湖岸植生の復元などが中心となっている)、などが分かる。 それにしても、近年における情報活動記事の増加は著しい。その原因として、ひとつには、出前シンポジウムなど、常陽新聞が行う霞ケ浦関連の活動に関する記事の増加を挙げることができる。常陽新聞の霞ケ浦に対する情熱と息の長い啓蒙活動は、地域に多大な影響を及ぼしていると思われ、その努力には敬服せざるを得ない。しかし、これを措いても、情報記事増加の裏には、霞ケ浦に関係する活発な市民活動と行政の広報活動がある。また、それらを可能な限り拾い上げようとする常陽新聞の編集方針が見える。その意味で、地域における合意形成に果たすこの新聞の役割は、無視し得ないものと思われる。 記者は現場にあって、現場の情況、空気を正確に報道することを旨とする。ところで、市民活動や研究報告会、広報活動などは、主催者や発言者の意図に沿って進行するので、その場の空気を正確に伝えると、それがそのまま会合などの提灯持ちになり兼ねないという危険が伴う。また、報道する側は、現実のさまざまな活動や発言が、必ずしも当を得ていない場合があることも考えに入れなければならない。このあたりが大変難しいことであるが、第三者の肯定的意見と否定的意見とを並列するなどして公正を期することは、報道のあり方として当然のことであろう。意見や感情を誘導するかのような大新聞の記事を散見するなか、常陽新聞が地域の健全な報道機関として機能し発展することを願うものである。創立100周年に向けた新たな出発に期待し、ご健闘を祈る。 (富士常葉大学環境防災学部教授、元・筑波大学生物科学系教授、土浦市在住) |
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